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太陽 No.134 1974/7月号 掲載
第十一回太陽賞発表『刺青』 吉田一夫
 平凡社
状態 経年劣化
order number: 28_003
price: \1,000-

グラビア8p、総評・選評4p

品の意図 吉田一夫
<刺青>
ー今まで刺青の作品は数多く発表されているが、彫りあがったものばかりのように思われる。私は刺青を彫る過程において、血の滲みでるのをみて、また違った衝動を受けました。刺青は、閉ざされた美であることを身をもって感じました。一つは生の肌に描かれる古典的芸術性。二つめには血による変化の美しさ、また目をそむけたくなる不気味さというか恐ろしさを感じ、それを表現するには、カラーだと思いました。特に血による戦慄というものを表現してみたかったのです。

※カラーでは、太陽賞を受けた初めての作品です。

受賞の言葉(抜粋) 吉田一夫
この作品は、昨年一年間刺青のみ撮り続けた内の一部で、昔は黒一色であったものが今では彫師が考案して十色程使って手彫、機械彫と併用され美しく仕上がって行く中(うち)に、血が流れ其の変化、肌との造形、次はどうなるかと日が移り、人が変わる程に、彫(ほり)に魅せられて、自分自身の感覚で撮り続けてきました。

総評(抜粋) 伊奈信男
この作品では、刺されるものの肉体は無視されて、刺青そのものと、その営為が表現の対象となっている。従って完成されたときには、すでに消え去って見られない血の流れや固まりも、精密に描写されており、これが刺青そのものに加わって、画面効果を増強し、谷崎潤一郎的な退廃的、耽美的な刺青の世界には見られない、鮮烈にして華麗、魔術的リアリズムともいうべき、極めて迫力のある美の世界を現出しているものである。

選評 石元泰博・五木寛之・木村伊兵衛・中島健藏・原弘・渡辺義雄