別冊 アトリエ No.29
画家とモデル  東郷青児

 
1956 12 15
  アトリエ出版社
状態 折れ、破れテープ補修、スレ、値札跡
order number :M007-H
price:  sold out

ソンブレロを深々とかぶってポーズをとっているのは、昭和32年、♪デ〜オで
大ヒットした「バナナボート」のカリプソ娘、浜村美智子です。
歌手としてスカウトされる前に、画家東郷青児のヌードモデルをしていました。
下の写真にあるように、野性味ある顔立ちが非常に印象的です。
この雑誌では、90ページすべてに、彼女のヌードポーズが掲載されています。
ポーズをとった彼女も魅力的ですが、各ページに書かれている東郷青児の解説が
実に迫ってきます。

例えば、表紙のポーズには、「VとXにソンブレロを乗せる。股をつぼめてYに
しても面白い。絵にならないポーズから絵を割り出すのが新しい手段である。」

他に、「ウかんむりのような尻の線が一つの発見だ。これも直接では絵にならない
ポーズだが、横にしたり逆さまにしたりしてイメージを追うと、一種異様なものが
生まれて来る。片膝をあげたポーズからは、あげた右膝と、左の耳に物語りが
ある。」 A

「寝ている女の体は、手の置き所、足のひねり具合、膝や肩の位置で
言葉以上の言葉を感じさせるのだ。」
 B

最後に画家とモデルの関係のコメントを少し長いですが引用します。
「画家とモデルの関係は、所謂男と女の関係と同じように、無限の問題を持って
います。この偶然の結びつきから、数えることの出来ない多様な人生が動き、
高く聳え、低く流れて新しい価値を生んでいくのだと思います。それはある意味
での恋愛感情にも似ているし、その燃焼が激しければ激しいほど、仕事の深さも
でてくるような気がします。ただ恋愛と違うのは根底の冷酷さで、この寒波が
モデルの皮膚を食い破り、その奥から特別なイメージを苦心して引き出すの
です。画家とモデルの関係も生優しいものではありません。」


写真 中村立行   画家・彫刻家・デザイナー・写真家のために


             

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